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ウィリアム・モリスから受けた芥川龍之介の影響

ウィリアム・モリスは、19世紀イギリスの芸術家、デザイナー、社会主義者であり、美と社会の統合を主張していました。芥川龍之介は、その著書『ニルヴァーナ』の中で、モリスの著書『ニューアース』に感銘を受け、社会主義者としての視点から、日本の美意識との融合を試みました。彼は、モリスのような美と社会の統合を目指す思想を、日本文化に取り入れることで、芸術と社会の一体化を追求したのです。また、モリスの作品や思想が、芥川の文学作品にも影響を与えたとされています。モリスの理念は、美術、文学、建築など、様々な分野に影響を与え、現代のデザインや建築、社会運動にも継承されています。

【文学的な影響】
芥川は、モリスが設立した出版社「ケルムスコット・プレス」で刊行された書籍に魅了され、その美しい装幀や書体に感銘を受けました。また、モリスの詩や物語にも影響を受けており、自身の小説においても、モリスの影響が見られます。たとえば、芥川の小説『蜘蛛の糸』は、モリスが編集した中世の物語『ニーベルンゲンの歌』から影響を受けており、その物語の中に登場する竪琴をモチーフにした箏の音色が小説の重要な要素となっています。

【美術的な影響】
モリスは美術と工芸を融合させ、美しいデザインを生み出すために手工芸品による生産を主張しました。芥川は、モリスの美意識に共感し、自身の小説においても美術的な描写を多用しています。たとえば、『羅生門』では、金屏風や半纏、『文士の長靴』では、白磁の花瓶や菊花の絵など、美術的な要素が登場します。また、芥川は美術評論家としても活躍し、ヨーロッパの美術や文化について多くの知見を持っていました。

【思想的な影響】
モリスは、美術と産業を融合させることで、美しいデザインと高品質の製品を提供するための「アーツ・アンド・クラフツ運動」を展開しました。芥川は、自身が編集した雑誌『筆の友』において、モリスの思想を紹介し、美的価値や手工芸品の価値を再評価する記事を掲載しました。また、モリスが社会主義者であったことにも影響を受けたと考えられます。

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